空飛ぶかめ

小学校での実践について、あれこれ記録します。

『学び合い』~私のルーツ~

私が子どもたちに最も身に付けさせたい力は「他者を頼る力」です。

                    

 

これ、私が某自治体に提出したエントリーシートの最初の文章です。

 

 

 

遡ること、5年前。

私はNPO法人育て上げネットという就労支援団体で務めていました。

www.sodateage.net

先日、職場でお世話になった所長と電話で話す機会があり、当時のことを思い出していました。それはそれは、もう、日々驚きの連続。自分の描く「生活」とはかけ離れたケースがたくさんあり、学ぶことはたくさん。貴重な時間でしたが、職場での時間は決して楽なものではありませんでした。

 

多くの就労支援業界では、まず初めにインテークという面談を行い、これまでの経緯をお聞きしながら、今後の方針を立てていきます。採用されて半年が経過したころ、私も面談を担当する機会が増えてきました。

 

ある日、再就労を目指して男性が来所されました。

その方は有名私立大学卒。

 

大学を卒業しても就職できない。

アルバイトが長続きせず、すぐ辞めてしまう。

 

アルバイトを辞めた経緯をお伺いすると、次のような答えが返ってきました。

「分からないことがあっても、タイミングをつかめず聞けなかった」

「ミスをしても、それを報告できず、余計怒られてしまった。だから嫌になった」

 

その時の私はほんと未熟で、

(えっ!?○○大卒やんね?そんな訓練してきたでしょ?)

と心の中で思ってしまったのです。

 

続けて質問してみました。

「大学生のときはどんな風に過ごしていたの?」

 

「サークルも入って、楽しく過ごしていました。ゼミでも○○研究室に入って、卒論書いて・・・」とよく聞く大学生の日常。

 

「でも・・・授業のグループワークとかは、仲の良い子でも自分の失敗とかを知られるのが嫌だったし、あまり関わりの無い子には質問することも避けていました。分からないまま過ごすことも多かったんです。こいつこんなことも分からないって思われるの嫌じゃないですか」

 

と、こんな会話は決して珍しいものではありませんでした。

 

利用者によって背景は様々ではあるものの、多くの方々に共通していことが、「分からないことを聞けない」「分からないことが知られたら馬鹿にされる」「どのように質問すればいいか分からない」という経験や考えを持っているということでした。

 

一人でも多くの人たちが、自立してお金を稼ぎ、生活していくためにできることは何か。就労支援業界のようなセーフティネットは確かに大切だが、それより前にもっとできることがあるんじゃないか。働きながらずっとモヤモヤしていました。

 

そして、その答えが見つかったのです。

小学校の段階から、そのような力がつく教育をすればいいんだ!と。

 

これが私の『学び合い』のルーツです。就労からこぼれ落ちてしまった方々をたくさん目にしてきた。だから、この思いは簡単にはゆるぎません。

 

不平等なこの世界を生き抜くために必要な力は言い出したらきりがありません。

ですが、いざとなったときに「他者を頼る」ことができれば・・・

 

できないよりはマシです。

 

極端な例ですが、失業してしまい、生活保護の申請をしたいが利用方法が分からない。一人で聞きに行くには勇気がいる。そんなときに、家族や友達に「一緒に区役所行ってくれへん?」と言えること。バイトでレジ清算を打ち間違えた。上司に「すみません。打ち間違えてしまいました。どうすればいいですか?」と報告できること。ささいなことですけど、このようなやりとりができるようになってほしいのです。

 

職場に復帰する日が近づいていきました。

なぜ『学び合い』なのか、もう一度問い直しています。

じゃないと、語りが鈍ってしまいそうで怖いのです。