空飛ぶかめ

小学校での実践について、あれこれ記録します。

1・2年目にチャレンジした「信頼ベース」の実践で、僕が見落としていた大切なこと。

2年ぶりの再読・・・

今日職員室で、岩瀬さんの本を再読した。

職場にずっと置いてあって、たまたま目にとまったんだ。 

よくわかる学級ファシリテーション?―かかわりスキル編― (信頼ベースのクラスをつくる)

よくわかる学級ファシリテーション?―かかわりスキル編― (信頼ベースのクラスをつくる)

 

 あと一ヶ月後には新たな立場で子どもたちと関わることになる。担任になれるかはまだ分からないんだけど。そんな時期だから、「学級開きはどうしよう」「出会った最初の日に、子どもたちへどんな言葉を届けよう」と考えることが増えていたんだ。このタイミングで、もう一度この本を手にとることができて本当に良かった。なぜなら、線を引く箇所も紐づく経験も、1年目に読んだときと全く異なっていたからだ。自分の経験値が増えてきたからこそ、見方や考え方が変わっていたのだろう。

 

提案通り実践をしていないから・・・

 誤解を恐れずに言えば、本書で紹介されている教室リフォームやプロジェクトアドベンチャー、振り返りジャーナルなどの実践はどれも真新しいものばかり。教室に畳を取り入れる提案なんて斬新すぎるよね。(僕は読売新聞の教育ルネサンスで取り上げられた岩瀬さんの教室リフォームの実践を知ったときは衝撃だった。結局、型破りな面だけに惹かれていたんだけどね…。そこに至る理念にも目を通していたのに…)

  私は1年目から、これらの実践を真似していった。「本の提案通り」進めれば、岩瀬学級と同じようなクラスを実現できると思っていたんだ。結果は・・・言わずもがなである。大失敗だった。理由は簡単。「本の提案通り」ではなかったからだ。

 

本書ではファシリテーターの技として次の5つが紹介されている。

技1 インストラクション(説明)

技2 クエスチョン(質問)

技3 アセスメント(評価)

技4 フォーメーション(隊形)

技5 グラフィック&ソニフィケーション(可視化&可聴化)

 1年目の僕に、特に欠けていたのは「技3アセスメント(評価)」だった。アイスブレイクやミニゲームをすれば、子どもたちの関係性は豊かになっていく。そう信じていた。きっと、「アクティビティが成功するか否か」に目を奪われ、「起きていること」に目を向けることができていなかったのだと思う。上手くいかなければ他のアクティビティにチャレンジし、パッチワークのごとく実践を重ねていった。実践の回数と反比例するように、子どもたちの関係性が徐々に冷えていたことにも気づかずに・・・。

 2年目からはちょんせいこさんのセミナーに参加するようになった。本を読むだけでは腑に落ちなかったことも、実際に話を聴くことで信頼ベースの実践をなんとなく理解できるようになった。それでも失敗ばかりだった。岩瀬さんやちょんさんの提案を形だけ追試することで精一杯。いや、形さえもできていなかった。子どもたちの心を温めたり、冷やしたりと自分勝手な教師だったと思う。なぜうまくいかないのか。繰り返しになるけど、それは「本の提案通り」ではなかったからだ。

 

セブン・イレブンじゃんけんの紹介ページでこのような記述がある。

ゲームで盛り上がったかどうかは問題ではありません。ファシリテーターは、「誰が声をかけていたか」「孤立しがちな子はどうしていたのか」など、ゲームに見える「子どもたちの関係性」を観察し、チームの成熟度をアセメントします。そして課題を引き出し、具体的な次の一手を提案します。このゲームが成立しなければ、もっとハードルの低いゲームから再スタートします。ゲームを通じて、意外な子同士が声をかけ合い、笑顔を共有する。子どもたちが、新たな関係性を育み、学び合う小さなきっかけをデザインし、一緒にチャレンジします。多様な関係性を温め育むプロセスを、積み重ねていきましょう。

・男女がうまく混ざれない時は→男子同士、女子同士の成立を目指す。

・ハイタッチが難しい時は→エアータッチでもOK!

・うまくつながれない子がいたときは→教師も参加し、声をかけ、つなげる。

という風に、子どもたちの関係性やチームの成熟度をアセスメントし、今必要とされる具体的な一手を提案する。チームのつながりを高め、学び合う関係性を育むために、常に子どもたちの様子をアセスメントしながら、プロセスをデザインする。「これが岩瀬さんの実践の本質なんだ!」と今更腹落ちしたのだ。あぁ、納得するまで時間かかりすぎだよ。ほんと。本書で紹介されているどの活動にも、その活動を通して集団の成熟度や個々の関係性を観ようとするファシリテーター岩瀬さんの姿がある。1・2年目の僕は見逃していた。だから「提案通りの実践」ができなかったんだ。

 

 

アセスメントから始まるプロセスデザイン 

インクルーシブ教育を通常学級で実践するってどういうこと? (インクルーシブ発想の教育シリーズ)

インクルーシブ教育を通常学級で実践するってどういうこと? (インクルーシブ発想の教育シリーズ)

 

本書は青山さんと岩瀬さんの対談本。ここでも興味深い記述がある。

 ユウキさんは、僕が勤務していた学校に4年生で転入してきたのですが、キレやすく、教室に居るのが困難で1日中保健室に居ることが多くなっていました。それで5年生から僕が担任することになりました。4月の最初に、クラスのみんなで行うアクティビティが「プロジェクトアドベンチャーのようなコミュニケーションや課題解決を中心に据えた活動だと、多分、ユウキさんは感情のコントロールが難しくなり失敗体験をしてしまう可能性が極めて高いと考えましたので、「まずは『教室リフォームプロジェクト』の中でユウキさんがどんな行動をするのかみてみよう」と思ったんです。・・・中略。「ユウキさんにはやりたいことがあって、それを止められるようなことを言われるとキレるんだ」とわかりました。

 そこで、まずはとにかく僕がユウキさんの側につねにいて、僕がユウキさんに仕事を依頼したり、活動にも気持ちよく参加できた、貢献できた、ということを体験することで、今度の教室は自分の居場所があるらしいということを実感できたらいいなと思いました。まずはユウキさんがキレるタイミングをつくらないように、教室を出ていくタイミングをつくらないようにと思っていました。

流れをナンバリングすると・・・

  1. ユウキくんのアセスメント
  2. 活動の選択(教室リフォームPJ)
  3. 活動中のアセスメント
  4. 教師の関わりを選択
となる。本書でも指摘されている「手段の目的化」の視点から見ると、「とりあえずプロジェクトアドベンチャーで成功体験を積もう」となれば、他者との関わりが苦手なユウキくんは4月早々から「失敗体験」を積んでしまう可能性があったのだ。岩瀬さんはユウキくんの現状から、教室リフォームの活動を選択し、ユウキくんの更なるアセスメントを試みたのである。この岩瀬さんの内面が詳細に記されていることに、この本の価値があるだろう。

 

 では今日はこの辺で。書けることは他にもたくさんあるので、また改めて記事にしていこうと思う。 それぐらい価値のある読書の時間だった。読み返せて本当によかった。来年度担任を持てたら、信頼ベースと『学び合い』とかじゃなくて、子どもたちの幸せを願う1人の大人として子どもたちの前に立ちたい。そのために必要なファシリテーションの技を学び直そう。