空飛ぶかめ

小学校での実践について、あれこれ記録します。

ファンタジーの共有と仲間意識

授業づくりネットワーク「個別最適な学び」をようやく読み終えることができた。

 

読んだ感想というと?

「個別最適化」や「個別最適な学び」という言葉はよく耳にしていたけれど、「結局、何をもって最適化と言えるの?」という状態だったし、自由進度学習、『学び合い』、UDL、ICT、オルタナティブ、ケア、宿題、学習環境などの多様な視点・実践を通して、「個別最適な学び」について考える機会を得られたのは良かったと思う。

 

良かったことは?

 うーん、良かったことは発見がたくさんあったこと。たくさんあるから、今回は一つだけ。阿部隆幸先生の『学び合い』の視点から、個別最適な学びと協働的な学びについて考える論がいいな!って思った。特に印象的だった箇所は、ファンタジーの共有と仲間意識という章で引用されていた日本協同教育学会『学習の輪』という本のメンバー間に協力関係を生み出す10のポイントが記されていたところ。以下、引用。

 

  1. 目標の共有から生まれる協力
  2. 役割分担上の協力
  3. 作業自体に埋め込まれた協力
  4. 学習資源(道具や教材)の共有による協力
  5. 学習情報(知識・情報・経験)の共有による協力
  6. 学習空間共有のための協力
  7. ファンタジーの共有による協力
  8. 仲間意識による協力
  9. 外的挑戦に対する協力
  10. 報酬のための協力

 

「協力しよう」と大人も子ども簡単には口にするけれど、上に書いてあるように条件、環境、方法など様々なシチュエーションがあるのだと新しい気づきがあった。以下は「ファンタジーの共有による協力」と「仲間意識の協力」についての解説文の引用。

 

「ファンタジーの共有による協力」とは、「目標の共有から生まれる協力」を超えて、より大きなミッションを共有することと説明されています。例えば、自分自身の目標達成と共に級友を認め合い高め合うような学級目標になっていて、それが単なるお飾りではなく学級の構成員の多くがその実現を目指している場合、この類の協力として形に現れます。自分自身の学びを進めながら(個別最適な学びを進めながら)、級友の学びに寄与し合う(協働的に学ぶ)ことにつながります。

「仲間意識のよる協力」とは、自分たちを互いに仲間と認め合うことで自然と協力し合う気持ちが生まれてくるものと説明されています。例えば、学級内の多くの構成員がこの気持ちを共有していたら、課題の内容や取り組む方法が異なっていても(個別最適な学びを進めていても)、相手は何をしているのだろう、何か困っていることはないかな、自分はここで困っている状態なのだけどちょっと助けてもらえないかなぁなどと考えた活動(協働的な学び)が見られるということです。

 

上にあるように、学級内で共に目指す大きなミッションがあれば、教師がいちいち語らなくとも、教室空間にはそのミッションを達成するための行動が現れるようになる。例えば、そのミッションが「1人でも見捨てない」「自分とみんなを大切にする」という類のものであれば、学習が個別化されても、ゆるやかな協働、つまり子どもたち同士のつながりが保障されるのだろう。苫野さんが提案されていた「学習の個別化・協同化・プロジェクト化の融合」という言葉を思い出した。「個別最適な学び」が孤立した学びにならないためには、必要な人と必要に応じて、人間関係の濃淡を超えて教え合い学び合える環境があるどうかがポイントなる。このことから、『学び合い』の考え方で学級経営や授業を行っていくことが、「ファンタジーの共有による協力」「仲間意識にようる協力」と親和性の高いものであるという阿部先生の解説は大きく頷ける。

 

これからどうしたい?

一方、現在ボクが担任しているクラスには学級目標がない。ここ数年作れていない。子どもたちとは機会があれば、「今、君たちにとってこのクラスはどんな場所になっている?これから、どんな場所にしていきたい?」と話し合うことはよくあるのだけど・・・教室内でいつでも見れるような掲示物にはしていなかった。子どもたちの様子を見る限り、子どもたちにはボクの大切にしていることが少しは伝わっているかな?とは感じてるのだけど、「私たちにとってどうか」という点では自信をもって語れないと感じている。学級目標をつくることが目的ではなく、ともに過ごす学級という場所を「どのような学びの場所にしたいのか」、加えて「私たちはどうしたいのか」という視点で考え直していきたい。あっという間の3学期だけど、サークルタイム+しつもんの技カートやしるらないカードの力を借りて、話し合ってみよう。

それにしても「ファンタジーの共有による協力」という言葉がよいなぁ。ふんわりとしててもいい。理想とする教室(社会)を目指して、協同性がつくられていく場所ってすてきだし、そのような社会であってほしいと思うもの。学習の輪の本も、昔は難しすぎて断念してしまっていたから、もう一度読み直してみよう。振り返れば振り返るほど、読む本が増える。引用文をメモしたり、それについて感じたことも都度修正していかなければ・・・。